Column

病院長コラム

「ウィズコロナ時代」にあたって

今や新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、人々の社会生活に対する意識や人生観までもが大きく様変わりする時代の波が押し寄せています。しかし、私達は、人類数千年の歴史を教訓とし、智恵を振り絞って前向きに乗り越えていかねばなりません。

新型コロナ感染症の恐ろしさについては今や多くの方々が様々なニュースでご存じのことと思います。しかし必要以上に煽られることなく、正しく怖がり、適切な感染防護に取り組んでいくことが重要であることは言うまでもありません。幸い、私共では現時点では深刻な院内感染などは起こってはおりませんが、新型コロナウイルス感染症自体の問題以上に、深刻な問題が黙々と迫ってきています。それは新型コロナウイルス感染症以上に死亡率や重症化率が高い疾患が他に無数にあるにも関わらず、その治療や予防がおざなりになっているという現実です。

日々の綿密なケアと治療が必要な患者さんであるにも関わらず、病院は危ないところであるという風評に基づき、薬が切れても病院に来られない患者さんたちが増えつつあります。とくに糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病においては、薬をしばらく飲まないでおられても、当面これといった症状悪化がみられないのが普通です。ただ通常これらの疾患の合併症は当初は黙々と進行するのが普通であり、しかしひとたび悪くなったときは手遅れといっていいほどの状態になっていることが多く、そのような方々が最近明らかに増加しているのです。また生活習慣病だけでなく、早期発見が最も大切な癌・悪性腫瘍についても、検診を受けずじまいになって発見が遅れる例も散見されるようになりました。あるいはその治療までもが感染症蔓延のために延期されることも見受けられるようになりました。

つまり、新型コロナウイルス治療体制の確保だけにとらわれない、新しいウィズコロナの時代というものを見据えた全人的な診療体制を確保していくことが極めて必要と考えます。

そのためにも、誰もが「安心」して当病院での診療を受けられるように、万全の感染防護体制を整えるべく、「病院は危ない」と呼ばれる風評を打ち破るほどの努力を私達医療関係者は日々続けていかねばならないと思います。そして、赤羽地区を中心とした周辺地区全体がどこよりも安心して生活できるウィズコロナ時代の場所となる一助に、本院がなれればと切に願っております。

2020年7月
赤羽中央総合病院・院長 廣 高史