Column

病院長コラム

新年にあたって

 明けましておめでとうございます。

 私が幼少期の頃、21世紀の今頃は、宇宙旅行が日常茶飯事に行われ、反重力自動車が飛び交い、多くの病気が克服されていると誰もが期待しておりました。21世紀になって21年目となった今、確かに多くの科学的な新技術が生まれ、医療技術も格段に進歩しました。しかし昨年来、世間は新型コロナウイルス感染症一色となり、最新の医学を持ってしても、1月3日時点で全世界の感染者総数は約8500万人、死者約180万人と、人類は空前の社会的危機に瀕しています。

 日本においても、緊急事態宣言が再発令されるかどうかの事態となっており、医療の逼迫、あるいは医療崩壊もあちこちで口にされるようになっています。医療における問題は、単に新型コロナウイルス感染症の患者収容に限界が近づいているだけでなく、従前からの重要死因である癌や動脈硬化性疾患の治療にも大きな制約がもたらされるに至っています。その問題は病院そのものだけでなく、新型コロナウイルス感染症にかからないようにするということがすべての生活の規範になってしまっている患者の皆様にもその影響が出ています。その一つに病院は新型コロナウイルス感染症を移されやすくて怖いところだから行かないという判断があります。しかし、現在どこの病院も最大限の注意をして院内に感染者が発生しないように全力で当たっています。もちろん絶対安全というものはありませんが、病院で新型コロナウイルスを移される危険性よりも、病院に行かないことで、癌や動脈硬化性疾患などの本質的な病気が悪化して(あるいは早期発見が遅れて)命にかかわる危険性の方がはるかに高い場合もあることを知っていただきたいと思います。新型コロナウイルス感染症だけを考えるのではなく、目の前のあらゆるリスクを考え、それを比較した上で最も重要な行動をとることが今の時代に実は重要なことなのではないかと思うのです。
 そのために、私共では、少しでも安心して受診していただくように、あらゆる角度から、病院における「安全性」を追求しております。本年10月には本院は新病院として移転し生まれ変わる予定ですが、21世紀にふさわしい、あらゆるリスクを考えた安心安全な病院にするべく日々全力を尽くしたいと思っております。

 本年が皆様にとりまして、身も心も健やかな1年になりますよう心より祈念いたします。

2021年1月
赤羽中央総合病院・院長 廣 高史